今回はVRでネックとなる「ベクションとVR酔い」について、実際にアプリを作成して体験してみました。
そもそもベクションとは?
視覚誘導性自己運動感覚(しかくゆうどうせいじこうんどうかんかく、ベクション(英: vection)とも)とは、実際には静止している人間が、視覚情報によって移動しているような感覚が引き起こされてしまう現象である。
VRには欠かせない要素であり、ベクションによって仮想空間内を移動しているように感じることが出来ます。
しかし、実際に身体は移動をしていないため、三半規管との認識に齟齬が発生し、VR酔いに繋がってしまう要素でもあります。
なので、VRでは勝手にカメラを動かすことはご法度とされているわけです。
作ってみた
ということで、実際にVR空間を移動するアプリを作成し、VR酔いを体験してみました。
実行環境はHTCのVIVEを使用し、Unityで開発しました。
仕様は以下のとおりです。
- 町並みを移動するだけ(Unity向け3D都市モデルデータ「ZENRIN City Asset Series」|ゼンリンの「Japanese Otaku City」を使用しました)
- 一人称視点、三人称視点切り替え
- 一人称視点は、等速、加速移動(加速中は視界制限)切り替え
- タッチパッドで移動、コントローラを上下に動かして移動
- 三人称時のプレイヤーキャラクターは「Japanese Otaku City」付属の「クエリちゃん」を使用
以下、それぞれ体験してみた感想です。
一人称視点(等速移動)
個人的な感想
- 移動開始時が一番酔う
- Z軸の移動より、X軸の移動のほうが酔う
一人称視点(加速移動)
個人的な感想
- 思ったよりは酔わなかった
- 視界制限を入れてみたが、あんまり効果は感じられず
- 視界制限を広くするタイミングが早すぎたかも
三人称視点
個人的な感想
- カメラをY軸を中心にグリグリ回転させればもちろん酔う
- それ以外は、思ったより酔わなかった
おまけ(実際に走る動作)
コントローラを激しく上下することで、走っている動作を模し、認識の齟齬を減らす試みです。
個人的な感想
- 走るためにコントローラを動かすので、正直酔ってる場合ではない!
- 酔うのは移動にしか集中していないから?
- 移動以外に注意を向けられればVR酔い対策になるかも
結論
酔うものは酔う。慣れるしか無い!
…というのも身も蓋もありませんので、GoogleのDaydream Labsが紹介しているVRにおける移動システムの知見を紹介します。
Daydream Labs: Locomotion in VR
等速移動
緩やかな加減速はせず、移動は一定速で固定する移動方法です。
ローラーコースターのように加減速を繰り返していても、実際には移動していないのでVR酔いにつながるようです。
トンネリング
VR酔い体験アプリでも実装した、移動中は視界制限をして移動する方法です。
視野の大部分を静止した空間が占めることによって、VR酔いを起きづらくするようです。
テレポーテーション
画像はDaydream Labs: Locomotion in VRより引用
加速も減速も無いので、非常に酔いづらい移動システムです。
ただし、プレイヤーの空間把握に混乱が生じるので、何かしらの方法で移動したことを伝える必要があります。
また、ゲーム内に組み込むべき理由付けが出来ないと、没入感を損ねたりします。
立つか、回転する椅子に座る
ハードウェアの制限などにより、360°回転させることは出来ないため、
立つか回転する椅子に座ってプレイすることを想定して設計することは非常に魅力的です。
プレイヤーがVR空間でどこに行きたいのかを確認させるために、VR空間内で自身を回転できるようにすると良いそうです。
最後に
VRの制限をゲームデザインに取り入れるという考え方もありますが、
どちらにせよ、ゲームに合わないのであれば、ユーザーは離れていってしまうので難しいところです。
ライセンス表記